表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

1

宿営地で、アツシさんと出会った時。
私はまだ覚者として、そして魔法で戦う術者としても駆け出しの身だった。

過去に、魔道書を読み込んでみたり、実際に少し使ってみたりしたことはあった。
でも、実戦経験は殆ど無く、皆無に近かった。
強健な剣士であるだろう彼の前で、なかなかそれを言い出せない。

村を出る前に、"ポーンの民"は感情が希薄だと聞いた。
だから、だろうか…?
彼は特に自分から話をしようとはしなかった。
私から何か話そうと思っても…少し後ろめたい気持ちからか、喉が詰まって言葉が出てこなかった。

そこへ、思い掛けず助け舟が出た。
宿営地の兵士達の教官が、私達に声を掛けてくれて、訓練を施してくれた。
何事もまず、基本が大事だと。

攻撃や魔法を的に当てて倒す訓練、重たい荷物を抱えて機敏に動く訓練…。
ーーどれも本当に基本的なものばかりだった。
アツシさんは、きっとそんな事をしなくても充分強い筈だったけれど…。
何も言わずに出来るまでずっと付き合ってくれた。

夕方までみっちり掛かったことで、私が実戦に全く不慣れだと云う事が、彼にはこの時よく分かったに違いなかった。
それでも黙っている彼に、有難くも少し申し訳なく…そして恥ずかしさも感じた。
ーーその態度に、内心戸惑った。
口に出さないだけで、こんな不適さで覚者となった私に、実は呆れているのではないかとも思っていた。
ついつい顔色を伺うようにじっと見ていると気付いてこちらを向く。
…けれど私が何も言わないので、また顔を背ける。
普通に話すことが出来るまでは、時間がかかりそうだ…。

とにかく体力気力共に疲れ果て、立っているのも疲れていた私は…。
その日はとりあえず、宿営地の宿舎で床を借り休む事にした。
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