表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

1

宿営地を出てからの道のりは…。

穏やかな気候の中の長閑さとは裏腹に、駆け出しの冒険者たる私にはかなり厳しいものだった。
山道に潜む狼の群れや盗賊など、昼日中の明るい時間でも関係なく現れ、問答無用に襲いかかって来る。

アツシさんやロベルトさんは即座に武器を手に身構え、迅速に応戦する。
でも私はーーその度につい体が堅くなってしまい、動けなくなる。
いきなりの実戦に、どうすれば良いか判断がつかない。
気持ちばかりが焦ってしまっていた。

「私に任せて下さい」
アツシさんはそう言って、いつも進んで前に出てくれる。
それは有り難くも、私も…自分も何か出来る事をしたいと焦った。
このままではこれから先、乗り越えていけなくなってしまう。

宿営地を襲った大蛇のように、もっと強大な敵にみまわれたら…。
先程までの戦いがまだ忘れられず、あの巨体が容易く宿営地を破壊した場面を思い出し身震いした。

その空気を察したのか、ロベルトさんが私の肩に手を置いて小声で告げた。
「私と同じようにやってみて下さい」
ロベルトさんが杖を目前に構え、手をかざして添えながら呪文を詠唱し始めた。
みるみるうちに、虚空に光が現れて増幅していく。

私も見よう見まねで、必死に続いた。
先に詠唱を終えたロベルトさんが、鋭く言いながら手を伸ばした。
「ーー武器に光の力を!」
手から離れた光は、私の杖に宿り、目映く光り輝いた。
「これは、補助の呪文。ホーリーギフトです」
その言葉が終わる頃合い、私の手にも光が生まれ始めた。これが魔法の光…。
「さあ、その光の力を彼の許に」
ロベルトさんの指示通り、アツシさんの方へと手を伸ばす。
光の束が緩やかに、彼が握る剣を包み込んだ。

”ーー出来た!” 
驚きと達成感から、ロベルトさんの顔を咄嗟に仰ぎ見た。
「この力は本来、死霊や悪霊を祓う力です。人と戦うときこれを使えば、加護の力によって致命傷にせずに済みます。こちらも加護の力で守られます。こういう使い方もあるという事ですね」
優しい表情で語る彼に、深い暖かみを感じた。
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