表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

5

ーーそして。

「…私は…そんなあなた様を、お守りしていきたいのです。」
彼の口から続いた言葉に、驚き目を見開いた。

私がはじめに望んだもの。ーー安心、安らぎ。彼はその想いに応えて私のもとへ来てくれたひとなのだと、今になって改めて思えた。
既視感を生じたような戸惑いに、返す言葉が出なかった。

「ーー先を急ぐ中、話し込んでしまい申し訳ありませんでした。……行きましょうか」
ふっと真顔に戻り歩き出そうとする彼に、私は精一杯に言葉を探した。
「…あの…。私…」
けれど、咄嗟にどう繋げていいか分からない。
彼の甚深な瞳はーー目を合わせると何もかも見透かされそうな気がして。

私一人、気まずさを感じていたその時。
通路の先から、異質な息遣いが聞こえ始めた。

大きな足音と共に近付いてきたそれは、全身が毛に覆われた巨大な一体の魔物…獰猛な獣人だった。
低い唸り声を漏らしながら、息も荒く走りながら向かって来る。
アツシさんが剣を抜き、私と獣人の間に立ちはだかった。
ーーけれど、相手はその大きな体からは考えられない跳躍力でアツシさんの前を抜けた。
「…しまった!マスター‼︎」
「ーーー‼︎?」
なんと獣人は、私めがけて飛びかかってきたのだ。

瞬く間に大きな腕に捉えられ、あまりの恐怖心に声も出ない。
獣人は私を脇に抱えたまま、来た道を戻ろうとした。
ーー助けて!
声を必死に出そうとしても、喉の奥が張り付いたように渇いて声にならない。
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