表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

4

「ーー大丈夫ですか?」
アツシさんが私の様子を伺う。
暫し言葉を失っていた私は、はい、とだけ答えてアツシさんの前に進み出た。
背を向けたまま、ありがとうと伝えた。
返事は返ってこない。けれど、背後の彼の気配は柔らかく感じた。

それから暫く歩いて行くと……。
森が開けた小高い丘に、建物のような影と所々人為的に刈られたような草地が見えた。

ーーひょっとしてあれは…?
そちらに集中し、目を凝らしながら近づいていった。
建物のようなものは石を積み上げられたもので、門構えと洞穴式の住処のような造りになっているようだ。
斜面は思ったより急で…。見上げながら歩いていると、足がもつれて前へつんのめった。
昨日からの疲れと、先程の戦闘の余韻で足が鈍い。

「危ないですよ」
アツシさんが腕を掴んで支えてくれた。
「…あ、ありが……」
前へ出て手を引いてくれる。
思いもしない彼の行動に、どきりとして。言葉が出なくなる。
彼の大きな掌は、肌寒さに冷えた手を、萎れかけた私の心をーー優しく暖かく包んでくれるように感じた。
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