表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

4

杖から光の弾を生じさせてアンデッドの群に振り撒き攻撃する。
その最中、獅子奮迅の活躍ながらも涼しい顔で群を薙ぎ倒すアツシさんに目を奪われた。
ーーきっと、今までも沢山の死線を潜り抜けて来たのだろう。改めてとても頼もしく思えた。
そして彼はついに最後の一体を吹き飛ばし、剣を納めた。

「こんなものですね。…やはり魔物はいましたね」
辺りを見回しながら呟くアツシさんには、先に戦徒としての勘が働いていたのだろうか。

「ーー遥か幾年もの昔…此処とよく似た場所に赴いたことがあります」
通路の先を見据えながら、アツシさんがぽつりぽつりと語り始めた。

「その頃は、師も従者として旅をしておられました。覚者様は、とても腕の立つ戦士でした。」
彼の眼には、何がーー。
…きっと、昔の自分達の姿が映っているのだろうか。

「…私はまだ経験が浅く…。彼らに同行させて頂き、技術を習う身でした」
かなりの手練に見えるアツシさんにも、駆け出しの頃があったらしい。
今の彼の姿からはとても新鮮に感じる話に、唾を呑んで耳を傾けた。

「そこは様々な部屋に分かれており、様々な魔物が蔓延っておりました。ーー私は…」
彼はそこで一度言葉を切り、息を継ぐ。
「お二人の強さに油断して、安易に構えていたのです」
そう言いながら、腰の辺りに下げたままの拳を握った。

「覚者様の背後に、いつの間にか魔物が…。私が気付いていれば…」

彼の言葉はそこで途切れた。
私にも、その後の状況がなんとなく想像出来た。ーーしばしの沈黙が流れた。

「ーあなた様には…。これまでお仕えして来た覚者様とは違う"何か"を感じました」
軽く俯いていた、彼の顔が上がる。
「そして私は…私自身をまた一からやり直せるのではないかとも思いました。…巧く言葉に出来ませんが…」
こちらを振り向いた彼と、目が合った。
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