表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

10

「其の杖と剣、元の持ち主の思念が宿るのか…。互いに引き寄せ合ったのであろうか。ーー見事に揃ったものよ」
珍しいもの、という言葉はそこにも掛かっていたのかも知れない。
その顔に、少し愉しむような色が差した。

「其方ら覚者と従者がその武器を取り、竜に立ち向かいし時…。我が千年の戦いは終わりを迎えられるかも知れぬ」
話の終わりを告げる竜識者の表情は……どこか安らかに見えた。
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竜識者の一連の話を聞き終え、私は暫くただ立ち尽くしていた。
竜を求める旅の始まりに、まさか自分に関わってくるかも知れない話を耳にする事になるとは…。
ーー驚き、戸惑い、それに言いしれない怖さを感じていた。
今私の手にある杖は、かつて竜を追い求めた人々の想いが込められた物…?
それを何も知らずに手に取った?
けれど、もしこの杖を手に入れる事が、既に決まっていた事だとしたら…?

つい、色々考えてしまう。

「…マスター?」
様子を窺うアツシさんの声に、ふと我に還った。
…そうだ、只此処へ来た訳じゃない。領都に戻り、任を終えた報告をしなければ。
竜識者に改めて、失礼しますと頭を下げた。

私達にしか見えないと云う、かつて私達と同じように旅をしたであろうこの祠の住人達は…。ただ静かに私達を見送っていた。
今はただ、道を求めて進むしかないのだと云うように。
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