表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

8

「砦へは、昔採掘場として盛んだった坑道があります。そこを通られると早いでしょう」
卿は視線を私に戻して、道程を説明してくれた。
そして懐から紙とペンを取り出し、大まかな地図を書いて渡してくれた。
ありがとうございます、と礼を言いながら受け取った。
「では…よろしくお願いします」
卿の恭しい一礼。
それに対して私もまた一礼を返し。失礼します、とだけ短く告げて。
こそばゆい気分になり、そそくさとその場を去った。
役人との遣り取りには、どうにもまだ慣れることができない…。
まだまだ、卿に不安に思われても仕方ない。そう思えてしまうのも、ちょっと情けなかった。

それから私達は、先日世話になった酒場を訪れた。
情報をくれたお礼と……それに何より、疲れた体をゆっくり食事を摂ってから休めたかった。
ギルドの方へも通じる広場のあたりで、思い切ってアツシさんも誘った。
明日は自由な時間もあるし、今晩はいつもより少しゆっくり居て貰えるかな?ーーなどと考えてしまう。

故郷から遠く離れて数日、彼と話は殆ど出来なくても。
ただ一緒に居てくれるだけでも、その存在は有り難かった。

ーー私はつくづく、彼に頼りきりだ。心の中で苦笑した。

「…よう、おかえり!」
店の軒をくぐると、また店主のあの屈託ない笑顔と明るい声に出迎えられた。
ーー自然と頬が緩み。
"…ただいま。"
そう言いたくなるほどーー疲れた心と体に、此処はとても暖かく感じた。
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