表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

1

領都の正門を通るのは、そう言えば久し振りだった。
故郷の村を発って…初めて此処へ来たとき以来だ。
そしてまた、あの峠を通って今回の遺跡へ…。
懐かしい気持ちがこみ上げる。

関所を更に先へ進んでいけば、またカサディスにも帰れるんだ…。
直に吹き付ける海風に、峠を沿う海岸線の方へ目を向け、思いを馳せた。
…また一度、皆の顔を見に帰ってみようかな…?
ふと何気無く、そう思った。

ーー今日は曇り。だからか、少し蒸し暑い…。

峠越えへの道すがら。
やはり辺りの茂みから、ゴブリンなどがたまに襲いかかって来る。
「任せて下さい」
「行きま~す!」
アツシさんとルゥさんが、武器を構えながら颯爽と駆ける。
ハゥルさんは私の側に待機したまま、杖を手に取ろうとした私をやんわりその手で制した。
"大丈夫ですよ"、そう語りかけるような視線におずおずと肯く。
ルゥさんは迅速に弓矢で射抜き、アツシさんは剣で勢いよく薙ぎ払う。そこをハゥルさんが、魔法で援護する。

ーーついさっき、二人が掛け声と共に飛び込んで行ったと思ったのに。
皆で瞬く間に魔物達を倒してしまい、もはや私には殆どする事がない。

不安で一杯だった、今回の旅立ちだったけれど…。
やはりとても頼もしい仲間達に、心強さを感じた。
アツシさんは勿論、ルゥさんとハゥルさん、そして先日赴いた任務で同行してくれたイージスさんやルインさんも。
そして初めて此処を通った時に一緒だった、ロベルトさんもそうだった。
皆、その卓越した戦闘力で私を守ってくれる。
ーー安心感と、心強さを与えてくれる。

皆が戦う背中を見ながら、私も願う。
ーーせめて少しずつでも、強くなりたい。
目的を果たして帰る時には…また皆で笑いながら、此処を歩きたい。

願いを込めるように、軽く拳を握った。
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圧倒的な攻勢に早くも戦闘が終わって、すっかり辺りが静まる。

「楽勝、楽勝♪」
ルゥさんが歩調を合わせて自然に近付いてきた。
「ねえ、セッちゃん。魔法は使えそう?」
私自身も、不安に思っている事だった。

声が出ない状態で、果たして呪文の詠唱が成り立つのか…。
ーーつい、俯いて考えてしまう。
と、肩にぽんと手が触れる。
「無理しなくていいからね。魔物は、全部任せて貰っていいくらいなんだから!」
その気持ちが、申し訳なくも…とても有り難かった。
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