表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

3

私もアツシさんに続くように、けれど恐怖でつんのめりながら、ハイドラの前へ躍り出た。

ーー間近で見ると…途轍も無い程に大きい。
物見櫓ですら高くそびえているというのに、その上をゆく位置に頭が在る。
そしてその長さもある巨体で櫓に巻き付き…いとも簡単に大きな音を立て壊してしまった。

見上げてもう一度息を呑む私の前に、細長い舌をちらつかせ鋭い牙を剝いた巨大な顔面が迫る。
私は必死に杖に念じて、やっと小さな光の弾のようなものを飛ばした。
その顔に、狙い当てるけれど……。
堅い鱗を身に纏う大蛇には、些細な攻撃はなかなか通らない。
さらに大きな口を開け、シャー、と鋭い声を立てながら顔面がにじり寄る。

私の足は一歩、また一歩と怯んで後退していた。

ーーどうすれば…?!
焦りで良い考えは廻らなくもーー反射的にそう思った時だった。

「ーーこれを使え!」
背後から、鋭い女性の声が飛んで来た。
見ると、白い鎧に身を包んだ女性騎士が、樽に詰められた爆薬をこちらへ転がして寄越そうとしていた。

「任せて下さい!」
女性騎士のその行動に、アツシさんが素早く反応し、横から滑り出て来た。
そしてそれを受け止め抱えた彼は、私の前で大きく口を開いた大蛇の腔内めがけて投げ込んだ。

「ーー奴は…首を落とせば動きが止まります!」
大きな剣の切っ先が大蛇の喉元をゆっくりと狙って傾いた。

けれど、アツシさんの剣先が、爆薬を呑み込んだ大蛇の首に届くかと思ったその時。
更なる大蛇の首が、彼を狙って伸びてきた。
ーーそうだ。
大蛇の魔物、ハイドラの首は4本あるんだ…!

「……危ない!」
たまらず声を挙げた、その瞬間。
彼と大蛇の首の周りを囲うように、炎で作られた壁が立ち上がった。
一瞬身を屈めた彼と、伸ばした鎌首を引っ込めたハイドラとの間に距離が空いた。
ほっと胸をなで下ろし、魔力の気配のする方を探った。
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