表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

5

丘の上の石積に近付いた所で、先を歩くアツシさんの足が止まった。
その視線の先を追うとーー門のような形に積まれた石の上に、静かに耽る人影があった。

「ーー識る者は識り、識らぬ者は識らず…」
低く静かな男性の声。石の上に座っていた男性は、そう呪文のように独り呟くとこちらを見た。
そしてゆっくりとこちらへ向かって歩いて来る。
近付くにつれ、胸の傷が光って僅かに痛んだ。
急な変調に身を軽く屈める私に、アツシさんも少し驚いたようだった。

ーーあの時と同じだ。
村を出ようとして、初めてポーンという存在に出会った時。
……と、云う事は……。
長いようで瞬く間の痛みは消え、光も消えた。
改めて男性の方に視線を戻す。

と、いつの間にかそこにもう一人、男性が立っていた。
よく見ると、そこそこに歳を経ている老人だけれども…。
衣服や雰囲気などがとても古めかしく、どことなく違和感があった。
「……私が、見えるのか」
後から静かに現れた老人が口を開いた。
その言葉に、私はゆっくり頷きながら歩み寄った。
「…ならば、見事。お前は望みの者に逢えたのだ」
そう言って、老人は恭しく胸の前で礼の形を取った。そして、先に石の上に居た男性が横に並び、しっかりとこちらを見た。
「ーーー!?」
ーー全く同じ顔が、そこに並んでいた。
驚いて声も出ない私に目を遣り、二人は祠の方を振り向き歩き出した。
付いて来い…と云う事だろうか?

私達は、祠の内に消えて行く二人の後を追って、慎重に歩き足を踏み入れた。
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