表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

11

ーー夜の酒場にてーー

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「マスター、その財布なんですけど」
「ん、何だい?」
相変わらず人の良さそうな笑みを浮かべる店主に、女店員は首を傾げながら訪ねる。
「こないだ、新しいのを買い直してませんでした?」
店主はその質問に、ははは、と軽く笑った。
「なあに。気に入ってるんだから、いいじゃないか。…ちょっと、お節介したくなってな。あの二人を見てたらさ」

ーー"気に入っている"のは、どうやら財布の事ではなさそうだ。

苦笑しながら、女店員は更に質問を重ねる。
「そもそも、あんな遠い川なんていつ行ったんですか?全然知りませんでしたよ」
「ああ…」
店主はいたずらっぽい笑みを浮かべ、腕組みして答えた。
「仕入れのついでに、昔の仲間とちょっとな。ーー今日のお勧めメニュー、なかなか美味だぞ」
きょとんとする女店員に、店主は更ににっと笑った。

「トカゲの尾の肉は、なかなか獲れない高級品だぞ」
女店員は、はあと短く溜息を吐いた。
「人のなんとかを邪魔する奴は…ってやつさ。あの兄さんの目を見てたら、若い頃を思い出すよ」
そう言うと店主は、愉快そうに、そして豪快に「はっはっは!」と笑った。
そして気を取り直したように、さて、と腰に手を当てた。
「ーーそういやアッサラームの旦那に差し入れ持ってかなきゃな。ちょいと行ってくる。すぐ戻るよ」
にっこり笑うと厨房へ消えた。

……やれやれ。後に残された女店員は、半ば呆れた様子ながらくすりと笑うのだったーー。

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