表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

10

領都には、夕暮れ頃には着く事が出来た。
私達はまず真っ直ぐに、酒場へ向かった。
まだちょうど、夕食の忙しい時間になる前だったようで。
アースミスさんはすぐに気付いて出て来てくれた。
私達が差し出した白い財布を見て、店主は愛想の良い表情を更に輝かせた。
「やあ、あんた達に頼んでよかったよ。ありがとう!ーー礼をするから、とにかく入んな」
明るい口調で招き入れられ、私達はいつものように店主を交えて食卓を囲んだ。

今日の報酬は私の頼みで、今この夕食を奢って貰うこと、にして貰った。
店主には、最初驚いて断られたけれど。
私にとっても今日は良い気分転換になったからと、認めて貰った。
本当は、昼食に貰ったお弁当だけでも充分有り難かったのだけれど…さすがにそれではと断り切られてしまった。
食事を終え、話がひと段落して。
もう今晩は、明日に備えて引き上げる事にした。
店主に改めてお礼を言われ、暫く見送られながら酒場を後にした。

そして私達は、宿の前でいつものように別れた。
「また明日参ります。…お休みなさいませ」
「…おやすみなさい…」
小さくお辞儀をして去っていくアツシさんの背中を、私はいつまでも見送っていた。
ーーいつもの事だけど。今日は何かすっきりしなかった。
"おやすみなさい…"
彼の姿が消えてしまった後の曲がり角を、まるでそこに姿を追うように眺めながら。
心の中で、そっともう一度呟いた。
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