表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

5

領都西側の門を出た私達は、道沿いに北西部の平原へと向かった。

アースミスさんも言っていたように、今日は天気が良く風も心地良い。絶好の行楽日よりだ。
カサディスを出てからは、目まぐるしく毎日を過ごしてきたから…。
外の空気が心地よく感じるのは久しぶりだった。
今日は特に特別な任務がある訳でもなく…昨晩はお陰でよく眠れたという事もあってか、足取りが軽い。

いつもはただ急ぐ道を、辺りの景色をのんびり眺めながら歩いた。

昨日はこの道の先、北の丘へ行く為に川に掛かる橋を渡った。
けれど、今日は橋の手前を曲がってとにかく西へ向かう。
川に沿って拡がる平原の間にも、道はちゃんと付けられているけれど…緑の絨毯を見ていると草の上を歩きたくなった。
意図的に道を外れて草を踏んで歩いた。

アツシさんも、「どうぞお気をつけ下さい」と言いながらも口調が軽い。
広々と視界の開ける先には、あちこちに牛が点在している以外はーー魔物の姿などは全く無かった。

あまり自由に歩き過ぎても、進む方向が分からなくなる。
西の平原は、そのくらいどこまでも広かった。
だから私達は、川が確認出来る程度に、歩く場所を選んで進んだ。

川に沿って行くと、領都からはすっかり離れ、辺りはかなり静けさを増す。
緑の平原は徐々に木々の傘を被り始め、森へと姿を変え始めた。
穏やかな空気から、森林の木の息吹から生じる澄んだ空気へ。
その移り変わりすら、昨日までは感じる余裕がなかった事だった。

伸び伸びとした雰囲気に、胸いっぱいに新鮮な空気を吸い込みたくなる。
一度立ち止まり、木々の間から覗く空を見上げ深呼吸した。

少し離れた向こうで、アツシさんが待ってくれている。
「…ごめんなさい」
そう言いながら、顔は綻んでしまう。
「ーーいえ」
そして、それは彼も同様に。

スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。