表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

7

綺麗な水の流れる川は、立ったままの高さからでも川底がよく見える。
ところどころ、魚が泳いでいるのも見て取れた。
こうやって魚が泳ぐ水の中を歩くのは…久し振りだな。ーーと、つい意識が逸れる。
目は川底を追っている筈なのに。
頭の中では、穏やかな波が寄せては返すカサディスの浜辺の風景を思い浮かべていた。
まだ村を発ってから数日なのに……妙に懐かしく感じ、少ししんみりする。
…みんな、どうしてるかな…。

ーーその時だった。
無意識に進んでいたようで、ちゃんと頭の隅では目視確認の判断が出来ていたらしい。
もう少し手前に行ったあたりに、白い異物が沈んでいる様子が目に飛び込んできた。
ーーきっと、あれだ!
はやる気持ちが急ぎ足になる。精一杯に水を蹴って進んだ。
その目的の物に手がかかると思った、その瞬間。
「……え…?!」
ーー体が傾いた。すぐ脇に、急に深いところがあったらしい。
声を挙げる間もなく、視界が水に覆われた。
「ーーーーー!」
とっさに声を挙げようと開いていた口の中に、一気に水が流れ入った。
焦る気持ちが、足元を余計に不安定にする。手を伸ばしてもがくも、ただ水を掴むだけ…。

ーーああ、もう……。

視界がぼやけかけた時、伸ばしたままの手を何かが強く掴んだ。
そしてそのまま、勢い良く引き上げられた。
「マスター…!」
聞き慣れた声。この声は…。
ーーアツシさん…。
急速に安堵感が押し寄せ、全身の力が抜ける。
彼の胸に抱き抱えられ、どうにか岸へ上がる事が出来た。

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