表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

13

「ーー彼は毎夜…。何処かへ戦いに赴いているのではないでしょうか。傷だらけになってもう一度帰って来た事もあります」
あれだけいつも一緒に戦って、まだ更に…?
「……?」
……一体、何故…?
返す言葉が出ない。
その思いを見透かすように、彼女の言葉は続いた。
「…彼は昔からそうです。あまり休むところを見た事がありません。リムへ戻ればすぐに回復はできます故…確かに長く居る必要もないのですが」
そして、小さく息を吐いて一言。
「少しは肩の力を抜けばいいものを…」
イージスさんは半ば溜息混じりに、ぽつりぽつりと語ってくれた。

普段、特に苦もない様子で、鮮やかに戦うアツシさん。その力は、日々見えないところで培われたものなんだろうか…。
ーーそう思うと、自分の頼りなさが恥ずかしくなった。
「…彼には彼なりの、きっと思惑があります。気になさらぬよう。私達は覚者様をどこまでもお助けするのが役目なのですから」
視線を落とす私に、イージスさんは…低くも柔らかい口調で告げた。
簡素な言葉ながら、温かく励ましてくれているのが分かる。
何も言わずただ、彼女の目を見ながら肯いた。
ちょっと細められた、綺麗な緋色の瞳を持つその柔らかな眼差しに。つられて、僅かにだけれど頬が緩む。

「覚者様。覚者様にとって…彼はどういう方ですか?」
ルインさんの唐突な問いに。
急には思考が追いつかないながらも、少しずつ言葉を探した。
「…強くて…優しくて…。一緒に…」
そこで言葉が詰まってしまい、何故か続かない。
少しの沈黙の後、ルインさんは、そうですか、と静かに微笑んだ。
「今夜は…私達も一緒に、休ませて頂いて宜しいですか?」
私は小さく頷いた。
その言葉に、寂しさが少し和らぐ気がした。

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