表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

12

「長旅は疲れただろう」
と、兵士は火の側の席に私達を案内してくれた。
ちょうど食事の支度が整っているからと、暖かい夕食を勧めてくれた。
火に掛けられた複数の鍋の中では、この環境にしてはなかなか、手の込んだ料理が調理されているようだ。
キノコがたっぷり煮込まれた汁や、ハーブと一緒に蒸された獣の肉が湯気を立てている。
それらを皆で少しずつ取り分けて食べた。
思いがけず恵まれた夕食は…。
長い道のりを歩き戦いの連続で疲れた体に、染み渡るような美味しさだった。

「ーーすみません。そろそろ失礼します」
食事が終わり、一息着いた頃。
アツシさんがさっと席を立ち上がり、テントの外れへ向かった。
ーーよく見ると、リムの碑石がそこにあった。
以前、この地の砦での攻防戦を繰り広げた頃…ポーン達の助力も得ていたのだろうか。
私達覚者とポーンの組み合わせの連れ合いにも、その碑石の存在は有り難く…。
…けれども。
それきり振り返らず、リムへ消えていくアツシさんの後ろ姿にーーやはり寂しさを覚えた。

「…アツシ殿は…やはり行かれるか」
イージスさんが呟くのが聞こえ、彼女の方を振り向いた。
「彼は毎夜、リムに戻るようですが。そのまま長居はしていません」
思いも寄らない言葉に驚いた。
ーーどういう事だろう。毎晩、何処かへ…?
気になって反射的に碑石の方を仰ぎ見た。
けれどそこにはただ、細かく文字の刻まれた石が佇むのみ。

ルインさんと一瞬顔を見合わせたイージスさんが、更に少しためらいながらも続けた。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。