表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

6

僅かに震える手で何とか杖を構えながら、呪文の詠唱を始めた。
落ち着け…!ーー落ち着かなければ。
目の前の状況に、思わず目を逸らしたくなる。
けれども、ちゃんと観察して魔法を撃たなければ。
自分に言い聞かせる。

遂にオーガ達はニ体共が攻撃を繰り出し、アツシさんはじりじりと後退を余儀なくされている。
私の前で盾を構えている、イージスさんとの距離が狭まってくる。
「お待たせしました」
背後からルインさんの声がした。
鋭利な音と共に厚い氷の壁が立ち、オーガ達の姿はすっかり阻まれた。
アツシさんが改めて剣を上段に構え直し、ぎゅっと握り直す。
ーーそして一気に振り降ろした。
氷の一部が割れながら飛散する。
その向こうで、ニ体の魔物達が重なり倒れるのが見えた。
アツシさんとイージスさんが飛び込もうとしていた直前。
呪文の詠唱を終えた私は、オーガの向こうに見えるある物に気が付いた。

「…待って下さい!」
私の挙げた声に、二人が振り返った。
魔法の構えを取ったまま、目配せだけ送る。
二人は何とか理解してくれたようで、こちらへと少し後退した。

オーガ達の付近に、火薬の樽が幾らか並んでいるのが見えた。
坑道の発掘作業用に使われていた物だろうか。
私が準備したのは炎の呪文。これをぶつければ…!そう思ったから。
倒れたオーガ達が、まだ完全に起き上がらない内に。
「ーーいきます!」
私は胸の前で構えた手を上に翳し、炎の壁を火薬の樽の付近めがけて立ち上げた。
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