表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

5

一体が騒ぎ出した事で、まだこちらに気付いていなかった個体もこちらに目を向けた。
「これは…まずいですね」
魔法の詠唱には時間が掛かる。ルインさんも流石に躊躇しているようだ。
先頭で盾を前方に構えていたイージスさんの更に一歩前に、剣を下段に構えたアツシさんがにじり出た。
黙って片方の掌をこちらに向ける。
ーー今の内に。そう言っているようだった。
そしてしっかり剣を両手で握り直すと、間合いを詰めていった。

オーガ達は直ぐに襲っては来ずに、興奮した様子で地面を足で踏みならしながら吠えている。
アツシさんが一瞬動きを止め、剣を水平に構えた。
ーーそしてそのまま瞬時に間を詰め、勢いよく剣の柄でオーガの膝上を打ち付けた。
その個体は痛烈な打撃に一瞬揺らぎ、少し後退する。
けれど直ぐ後ろに居たもう一体が支えとなり、倒れはしなかった。

攻撃を受け、怒りを露わにした獣人はーー雄叫びと共に乱暴に腕を振るい始めた。
「ーーくっ…!」
剣の刃でその反撃を受け止め続けるも。
闇雲に振り回される太い腕は、思わぬ方向から回り込んでくる。
遂にその内の一撃が、アツシさんの片腕を掠めた。
「…アツシさ…」
「早く!」
振り返らない、短い答えだけが返る。
尚も攻撃を受け止めながらの強い口調に、余計に気が焦る。
…でも、こんな時こそ冷静に考えなければ…。
時間は無駄に出来ない。
逃げる?…ううん、それは駄目、出来ない。
ーーならば、私に出来る事は…。

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