表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

8

ーー沈黙。
いつも二人で旅していた時と同じ…。
でも…これまでとは何かが違うような気がした。
私が彼の方を見ても、目が合わない。
それも…今までと…同じ?
言葉に出来ない違和感。
何も言えず、暫くただ彼の横顔を見ていた。
ふと、目に入ってきた彼が腕に受けた傷が気になった。少し血が滲んでいる。
「…あの…。大丈夫ですか…?」
布を手に、そこを押さえようとした。

けれど、すっと避けるように手を振り解かれた。
ーーどきりとした。
「ーーすみません。私は大丈夫ですから…」
一度目が合ったアツシさんの視線は、すぐにまた逸れてしまった。
どこか気まずい雰囲気に、私もつい俯いてしまう。
「…はい。ごめんなさい…」
反射的に謝ってしまう。
ーー気付かない内に、何か悪い事をしていたのだろうか。

” 何度でもお助けします "
そう言って微笑んでくれたあの時の記憶が…頭を離れないから。
目の前に、その彼は居るのに…。少し、寂しかった。

やっぱり、私が勝手に甘えていただけなのかも知れない…。
出会ってから今まで、あれだけ世話を焼かせて、負担にならないなんて…普通に考えても都合が良すぎる。
私がもっとしっかりしなければ…。彼にちゃんとマスターとして認めて貰える位に。
そうしなければ、いつも笑顔で居て貰える資格は無いのかも知れない…。
…私はただ、彼の覚者なんだから。
そっと背を向け、心の中で呟いた。

二人で居る時間が、とても長く感じた。
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