表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

9

坑道の中はいつまでもただ薄暗く、耳が痛くなるかと思うほど静かだ。
どれくらい、時間が経ったのだろう。
やがて元来た道の奥の方から、石壁に反響する二つの足音が近付いてくる。
「ーー今戻りました」
その声に顔を上げる。
ーーイージスさんとルインさん、二人と目が合った。

二人から見た私は、今どういう顔をしているのだろう。
イージスさんは何も訊かず…ルインさんは何も言わずにそっと肩を包んでくれた。

「すぐ出口が有ります。参りましょう」
イージスさんがそう促して進みかける。
私は一つ疑問に思って訊ねてみた。
「あの…。アロンさんは…?」
ルインさんは肩を竦め、ふふっと小さく笑って答えた。
「あの方は…。ここに残って、お店を開くそうですわ」
……意外な答えだった。
でも何だか、その逞しさに励まされたような気持ちになる。
彼からのお礼の品だとーー応急薬の小瓶や、瓶に密閉された肉や果物、それに金貨の袋を手渡された。
ただ通るついでの頼まれ事なのに、このような報酬など…貰い過ぎだけれど。
あまりゆっくりしてもいられない。
またの機会に、改めてお礼に立ち寄ろう。そう思って、今は先へ進む事にした。

私達は改めて出口の木戸をゆっくりとくぐり、久し振りとも思える外へと揃い出た。
ーーそう、今は先へ進まなければ。まだまだ、これからなんだから…。
外に出れば、嫌でも現実の流れが待っている。
ーー今はただその中に、身を任せておきたかった。
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