表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

3

"ドサリ"。
背後で何かが倒れる音。
振り向くと、倒れたゴブリン越しにアツシさんが居た。
いつの間にか、後ろから狙われていたらしい。
「ありが…」
お礼を言おうとして、はっとした。
ーーいつもと少し違う、厳しい表情。そして力一杯の剣戟。
いつも真剣に戦っている彼でも、その表情は涼しげで動きも軽やかだった筈…。
「……次……」
低い呟きが聞こえる。その姿はまるで……。
少しぞっとしながらも、私もまた戦いの中に引き戻されて行った。

遂に、陽も傾き掛けてきた頃。
両者の戦いには、睨み合う時間も増えてきていた。
ひしひしと疲労を感じ、それぞれ傷つき倒れた者も少なくない。
お互い手勢が減ってきている状態で、どう動くか…そんな緊迫した空気が流れ始めていた。
ーーと、その時。
とうとう、奥の建物の扉が開いた。
前線の指揮を執っていると思われるゴブリンが、こちらを指差し叫んだ。
「ナカマヲテツダエ!」
その掛け声と共に、中から新たなゴブリンの一団が走り出て来た。

「ーー覚者殿!此処は我らに任せて、どうか中へ!」
こちらへ、隊長が駆けつけて来ていた。
「我らがここで奴らを引き付けます。その間にどうか、中に居ると思われる本隊を叩いて下さい」
…でも…。
戸惑う私に、隊長はニッと口の端を上げて笑った。
「覚者殿には、強いお仲間が付いておられます。…指揮系統さえ崩せられれば、戦いも早く終わるでしょう。我らも信じてお待ちしております」

ーー隊長の言葉に、ゆっくりと頷いた。
ここはその言葉をーー想いを有難く受け取っておこう。
私達には私達の…。今、精一杯果たせる事を。

短く頭を下げ、急ぎ解放された扉へ向かった。
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