表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

1

イージスさんの言葉の意味は、私にはよく分からなかった。
…あれは…アツシさんに向けて…?
疑問には思ったけれど。ただ俯く彼に、何も訊けなかった。

ーーとりあえず、報告に行って宿に戻ろう。
此処に帰って来た途端、今日一日分の疲れがどっと押し寄せてくる。
通用門へ続く階段を、鈍い足取りで昇りながら…後ろを付いてきてくれるアツシさんは、やはりずっと俯いたまま。
今もこうして一緒にいるのに……。
彼との距離が、初めてとても遠く感じた。

職人区からの通用門を抜け、富裕区の邸宅の並びの角を曲がる。
今日も変わらず、マクシミリアンさんが城門前に立っているのが見えた。
「ーー覚者殿…!」
そちらへ向かいながら、ふと目が合ったと思った瞬間。
卿の方から歩み寄って来てくれた。
「ご無事で…!良かったです…」
ほっとしたような表情。
…本当に心配してくれていたんだ…。
「ありがとうございます…」
私が半分、無理を通して任務を受けたようなものだったから…少し申し訳なく思いながら答えた。

「…何とか任務は、完了しました」
まずは、結果の報告。
それに対し、卿は普段通り、儀礼的に恭しく一礼した。
「そうですか。ーーご健闘ありがとうございました」

ーーそして、もう一つ。
此処まで楽に帰れた事のお礼を言わなければ。
「いえ、こちらこそ…。お心遣い、ありがとうございました」
「…いいえ」
ふっと、卿の表情が緩む。
「大した助力も出来ず…申し訳ありませんでした」
こちらがかえって謝られているような、穏やかな口調で。あくまで謙遜する答えが返って来た。
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