表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

3

峠の上り坂を登りきり、次は麓への坂を下り…。
そして下りきったあたりに流れる川に、橋が架かっている。
このあたりは、領都グランソレンと半島の端を結ぶ関所の管轄に入る。
橋の上でハゥルさんが、右手側の先を指差した。

「覚者様、あちらへ向かいます。ーーあれが、水神の祭壇と呼ばれる遺跡です」
示す先には、青々とした木々や高く聳える岩壁に挟まれたーー細い滝。
以前通ったときは、まさかこの下を往く事になるとは思わなかった。

ーー更なる奥深い発見に、純粋に驚いた。

橋を渡り終えた先、関所としてテントが並び兵士が詰めている処を通る。
「…おお、覚者殿ですか。行ってらっしゃいませ」
番をして立つ兵士の見送りの言葉に、一瞬立ち止まって会釈して返した。
ふと前へ向き直ると、ハゥルさん達は…ここを越えた先の、細い脇道へと曲がり行こうとしている。
更に手を挙げて挨拶を返す兵士に、もう一度軽く頭を下げてからその後を追った。

木々や茂みに覆い隠されれるような小道は、先の見通しが悪い。
ハゥルさんとルゥさんが先導してくれる後に、アツシさんと私も慎重に続いた。

「ーー今回赴く遺跡は、最近になって発見されたようですね。…水神の祭壇…ですか」
手元の地図を確認しながら歩いていたハゥルさんが、顔だけこちらを振り向きながら呟く。
「この辺りは、特に立入る者も無く…ひと気の無い場所です。魔物にもご警戒を」
そう言われ、思わず溜息。

やはり何処にでも、魔物は居るんだ…。
学術的な調査目的の任務とは云えーー。
やっぱり、魔物との戦いはつきものらしい。
ただ今回は、先日の遠征と違って。
無数の敵が待ち構えて居る訳ではない、と思うけれど…。

そう思っていた時、前方で何かの鋭い掛け声が挙がった。

「出たな!ーー行くよ」
ルゥさんが短剣を握り、いち早く駆けて行った。

その先から、複数の甲高い叫び声。
ーーゴブリンの群だ。
ハゥルさんが直ちに杖を構え魔法の詠唱に入り、アツシさんも剣を下段に構え、先を急ぐ。
静かな緑の小道が、激しい戦いの喧噪に包まれた。

やはり魔物達はーーあっと云う間に倒され、地に伏していく。

敵の攻撃をいなして先を切り開くうち、広い川岸へと先が拓けた。
先ほど通ってきた小道からは、打って変わって見通しが良くなり……流れる水音が近くなる。

ゴブリン達の声もすっかり聞こえなくなり、皆それぞれ武器を納めた。

「まだまだ余裕 ♪…で、どっち?」
「ーー川に突き当たって左、ですね」
ルゥさん達姉弟は、言葉通りの余裕の表情で。
まるで、何事も無かったような会話を成している。
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