表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

4

目指す川自体は、目線よりだいぶ下に位置している。
大小の石が転がる急勾配の坂道を、足元を確認しながらそろそろと歩く。
ごろごろとした石や砂利に、たまに足を取られるけれど…。
ルゥさん達は普段と変わりない歩調で、ものともせず歩いて行く。

足を滑らせるとどこまでも滑り落ちて行きそうで、つい腰が引ける。
アツシさんが横を歩いてくれているのが、安心でもあったけれど。
彼がわざと、私にペースを合わせてくれてるのも分かっていた。

…こんな所で、気を使わせちゃ駄目…。

焦る気持ちが、足を勢い良く踏み出させ…でもうまく上がらない。
元々少し不安定だった足取りでは、思うように歩けない。
ーーー!
変な石の踏み方をしたのか…足がずるりと滑り、体が少し浮いた。
「ーーマスター!」
留まった先は、アツシさんの腕の中。
まただ。さっきも助けられたところなのに…。
「………。」
一寸の沈黙。
ーーさすがに、叱られる…?
俯き、肩を竦めた。
「足下が急です。どうかご注意下さい」
柔らかく、優しい声。

…どうして、このひとは…。
おずおずと頷き、口を結んだ。

戸惑う気持ちを抱えながらも…。
此処まで来て帰る訳に行かない、そう思う気持ちも直ぐに沸き起こる。

竜に関する知識の探索、という目的。
そして自ら進んで同行してくれているルゥさんとハゥルさん。
……それから……。

今回の任務への思いを改めて確認し、気を取り直して進む私の手を。
さり気なく、暖かい手が包み込んできた。
ーー優しく、でも力強く引いてくれる。

気恥ずかしくて、とても隣を見れないけれど。
それが誰のものか…よく分かって心地良い。

静かな川岸に、ただ砂利を踏むふたつの足音が規則的に響いた。

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