表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

6

「すみません。宜しいですか?」
ハゥルさんが静かに前へ回り込んで、声を掛ける。

「もしや貴方様は…教会の方では?」
神官の男性は、急に視界に入った人影に一瞬驚いて身じろぎする。
そして改めて私達の姿を、一人一人の顔を伺うように見回した。
「…あなたがたは…。覚者様ご一行…ですね」
私が肯くと、神官はほっとしたように緊張を緩めて告げた。

「私は、領都の教会から……調査のため派遣されて来た者です」
やっぱりここに、遺跡が…?

ーー頭に浮かんだその問いは、実際にハゥルさんが口に出してくれた。
「遺跡の調査…ですよね?此処には滝しか見当たらないようですが…?」
その問いの答えも含めて、神官は重い口調で語り始めた。

まず、目の前の滝の裏に入り口がある。そして中へは、同行した調査員が一人で先に入っていったと…。
此処にいる神官は、とても怖くて足を踏み入れられずにいたところだと。

…気持ちは、分からなくないけれど…。

皆そう思うのか、黙って話を聞いている。
そんな私達に、神官は縋るような目で訴え掛けた。
「お願いです…!中の様子を見てきて下さいませんか…?やはり彼が心配なのです」
祈るように手を組み、切に願うように声を絞る神官の姿に。
その目を見ながら、ゆっくり肯いた。
この人の願いも、そして私の目的も。全てはあの中に…。
ーーどのみち、中へ入るつもりだったから…断る理由もない。

それから、と神官は付け加えた。
「こういう遺跡には、石版などの資料が見つかることがあります。もし見つけられる事があれば…」
その言葉にも、迷い無く頷いた。

神官の見送りを背中に受けながら、いよいよ滝をくぐる。
激しく落ちる、滝の水音が耳を打つ。
ーーけれど、体は殆ど濡れなかった。
ばさりと布が掛けられ、視界が暗くなって…。
アツシさんの長いマントが手繰られ、それで私は頭から覆われていたから。
彼の真っ直ぐ前を見る横顔が、ごく近くにあってどきりとした。

「ーーあーあ、冷た~い!」
皆、手荷物から布を取り出して体を拭いている。
…そんな中、私だけ…。
ちょっと、他の皆に悪い気がした。
ーーけれどほんのり、胸の辺りが暖かくーー嬉しく感じた。

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