表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

2

「ーーさん。…セツナさん?」

眩い朝陽が顔を覗かせ始める、早朝。
いつもなら…もう起きて出支度を整え始めてている筈の頃合い。
早起きは元々身に付いている方なのに、今日は珍しく他人に起こされて目が覚めた。
昨日着ていたチュニックの上に、クロークも肩に羽織ったまま眠ってしまっていた。

…そうだ、昨日…。
ふと、思い出したくない生々しい記憶が鮮明に蘇る。

ーー忘れたいのに……。
この身に受けた確かな感覚が、そうはさせてくれない。
思わず身震いし、自分の両腕で身を抱え込んだ。

せめて、記憶が薄れるまで…。いっそ眠り続けていたい…。
ーーそう思いながら、また目を閉じてみる。
実際あまり眠れていないからか、瞼は意思に関係なく素直に閉じようとする。

「セツナさんってば、…起きなくていいんですか?」
また、声がした。
掛布から、そっと顔を覗かせてみると。
宿の女中さんの、エムさんが立って居た。
昨日の日中…彼女から裁縫道具を借りて。
繕いものをしながら、今日また発つという話をしていたから…。
それを覚えていて、起こしに来てくれたんだ…。

「おはようございます。朝ご飯、出来てますよ」
にっこり笑ってそう言ってくれる。
…はい、おはようございます。
私もなるべく笑顔を作って挨拶を返した。

「…セツナさん…?」

はい。何ですか?
ーー何だろう…?

「……セツナさん、あなたーーー」
エムさんの表情が、みるみる硬くなり。
ーー私に、ある事実を告げた。
それを聞いて、一瞬、"まさか"と思った。
…けれど…。
その異変は唐突に、確実に起こっていた。

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