表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

10

"ごめんなさい……、ごめんなさい…!”
何度も何度も、謝ってしまう。
ーーでもーー。
細かく嗚咽が混じり、うまく言葉になっていなかった。

あなたにはいつも…迷惑をかけてばかり。
こんなどうしようもない私なんか…、この人にふさわしくない。
ーーただ付き従ってくれているだけでも、恵まれていると思う。

……なのに……それなのに。
「……離して……くだ…」
「マスター」
耳元で優しく囁く声に言葉を遮られ、どきりとする。

「ーーお伝えしたい事があります。…聞いて頂けますか」

彼の腕の力が緩んだ。
そっと顔を上げるとーー彼の、穏やかながら真剣な眼差しがそこにあった。

「私は…あなたの従者です」
……そう。私は彼にとっての主ーー覚者。

「あなたをお守りし、戦うのが私の使命です」
……そう。彼はいつもどんな時でも、私を助けてくれる。

それらは聞かなくても判りきっていること。なのに私は何を…。
動揺していた自分が馬鹿みたいだとも思い、たまらず目を伏せた。

「あなたを守れればそれでいい…。そう思ってきました。ーーいえ」
静かに語る彼の声が、僅かに強みを帯びた。

「思っているつもりでした」

ややあって、彼が軽く息を吸う音が続き。
「あなたを困らせてはいけないと…ただ従者としての使命を果たさなければと…自分の心に蓋をしていたのです」
ーー息を吐くようにもう一度、強く抱き締められた。
一瞬、息が詰まる。
「けれど…あなたの気持ちを頂けた今ーー言わせて下さい」

ーー何故だろう。一気に脈が上がり、頬が上気する。
それはきっと……私には聞けないと思っていた言葉を、思い浮かべたから……?


「……あなたが……好きです」


優しい囁きでありながら、辺りに響く声と共にーー
耳元から伝わる熱が、体中を駆け巡る。
「……え……?」
ーー私は…。
……此処に、居ていいの…?
「ーーえっ?…あ…」
再び涙が、静かに溢れる。
彼の暖かな胸に顔を埋めた。

「…セツナ様」
囁くように名を呼ばれ……。
彼の手が、私の顎にかかり。顔を上げさせ、そして濡れた頬をそっと拭った。
まるで心臓が有るかのように、胸が苦しい。でも決してそれは……苦痛ではない感覚。
自分の中で、悦びの感情が納まりきれずーー外に出たいと訴えるような。

「泣かないで下さい。どうか…」
返事の代わりに、静かに微笑み掛けた。

「微笑っていて下さい…。私のそばで…」
ゆっくりと、彼の優しい瞳が近付く。
……ねぇ……。
ーーそっと、目を閉じる。
……優しく、温かい……。

ーー唇がーーー重なった。
自然と、互いの想いを露すように。
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