表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

9

まずは、アツシさんがそっと私の手を取り…。
紫色の輝きを湛える指輪を通してくれた。

…これでは何だか、まるで……?
きっとそう思っているのは、私だけだろうけど。
とても、彼の顔を見ていられず…。ただその様を、じっと見守った。

ーー次は、私の番。
小さく息を呑み、細かく震える指で彼の手を取った。
指輪を、手を滑らせ取り落としそうになりながら。
それでも何とか少し力を入れて保ちながら、入りそうな指にゆっくり通す。
ーー気恥ずかしさで、やっぱり顔は見れない。
ただじっと、静かに光る青い石を見詰め続けた。

そして、私の……彼への思い。
……それは…。
どんなに考えても、そしてそれを打ち消そうとしても。
やっぱり……一つしか出てこない。


…あなたが…。
「……好き……」


「ーーーー!」
周りの皆が一瞬、息を呑む。
「……マ、ス…ター……?」
「ーーセッちゃん…!」

ーー思い掛けなく、声に出ていた。
……そう……確かに声に。

しかもそれは…決して言ってはいけない……。
絶対、言わないでおこうとーー固く決めていた筈の言葉。

「……ごめんなさい……!」
思わず駆け出していた。
……駄目なのに……。……きっと、迷惑でしか……!
ーー 涙が滲んでくる。

「…待って下さい…!マスター!」

背後から、彼の声が聞こえる。
ーーでも、振り向けなかった。

「マスター!!」
ーーもう一度。
強く呼ぶ声と共に後ろ手を掴まれ、よろけたところを強く引き寄せられた。
どれだけ速く走ったつもりでも、やはりすぐ追い付かれてしまう…。
私なんかでは、到底かなわない。分かっていた事だけれど…。

こんな場所で、どこへ行く当てが在る訳でもなかったけれど、それでも。
固く抱き締められた腕の中から、抜け出して…どこかへ消えてしまいたい。

でも、腕に力が入らない。
ーー涙が……止まらない。

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