表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

8

二人はそれぞれ、私達の手に一つずつーー小さく冷たいも塊を、そっと握らせてくれた。

一体何かと、開き見てみると…。
それらは色違いの小さな石がはまった、銀色の指輪。

私の手には青色、アツシさんの手には紫色の。
形はごくシンプルな円形で、眩すぎず控えめな美しい輝きを湛えた石が印象的だった。
「……そっちはさっき下に、あとそっちは此処にあったの」
ルゥさんが、アツシさんと私の手の上の、それぞれの指輪を順に差し示しながらにっこり笑う。
そしてハゥルさんが、静かに告げた。
「今から…簡単な儀式を行いましょう」

……儀式……?

急ともいえる、思いがけない言葉に。
私はともかくアツシさんも、一瞬首を傾げてハゥルさんの目を黙って見詰め返した。

対してハゥルさんは、穏やかな笑みを浮かべる。
「ーー難しい事はありません」
微笑んだまま、軽く私たちを一瞥し。
「ただお互いの指に……それらをはめて頂けますか?」

一瞬どきりとして、反射的に掌に乗せているそれに視線を落とした。
「この遺跡はもしかすると…祭事など執り行われていた場所なのかもしれません。万物の命の糧となる水に…水神が宿ると例えて」

その言葉に耳を傾けながら、静かにたゆとう水面に思いを馳せた。

……此処で……。
掌の上の、指小さな輝き目を移した。
ーー水神に、祈りを……。
朧気ながら、まるでその光景が脳裏に浮かぶようで。

そしてそれが妙に、そして何故か身近な事のように感じた。
今にも杖をかざして…詞を紡げそうな感覚。
…それは…先程も感じた…?

「あくまで例え話でしか無いのですが…。それでも此処は……何か意味のある場所ではないかと思うのです」
ハゥルさんの声が静かに、けれどはっきりと胸に響く。

「ーーそしてこれも、私なりの解釈で恐縮ですが…」
話を続けるハゥルさんに、もう一度視線を戻した。
加護があるとされていたかも知れないこの場所で…あなた方にも護りの祈願をして頂いてはいかがかと思うのです。水のように…何時までも不変で居られるように」

誰も何も言わない。でも、皆が真剣に聞き入っていた。

「宜しければ…向かい合って頂けますか」
その言葉が終ると同時に、私達は自然と静かに向き合っていた。
dcac6deb4ad8ca3f950ba8f7af179118_l.jpg

目の前の、真剣な表情の彼の顔をーーそしてハゥルさんの方へも視線を送り、次の言葉を待った。
「宜しいですか。では…」
ハゥルさんが恭しく胸に手を当て、目礼する。
醸し出す厳かな雰囲気に、こちらも自然と頭を下げたくなる。

「まずアツシさんは…覚者様の右手に。そして覚者様は…彼の左手に。相手への思いを込めながら…通して頂けますか」
ただでさえ、向かい合っているだけでも…。
徐々に頬が上気してゆくのが判る。

ーー心臓がもしここに有ったら、きっと…。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。