表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

1

ーーーばさり。

石版にゆっくりと手を伸ばして触れたとき、頭の中にーー聞き覚えのあるような音が響いた。

え…?…まさかこれは…。

ーー覚…よ……我が……よーー

そしてまた…あの声も。

驚きと戸惑いに、無言のまま目を見開き…。
肩を支えくれていたアツシさんの手を解き、思わず辺りを見回した。
「ーーどこ……?」
ーー自然と、呟きが漏れていた。

「マスター…?」
「……セッちゃん?」

ーーーばさり。
……やっぱり……聞こえる。

ーーずっと聞こえ続けている声。そして何かの動く音。それはまるで羽音のような…。

まさか…。まさか…?!
「……行かなきゃ……」
「マスター……!?何を……」
自然と足が動いていた。疲れて歩くのもやっとな筈なのに…。
体が熱くなるような衝動と、沸き上がる複雑な感情はーーそれをも忘れさせ、両足を支配する。

運命が変わったあの日に感じた、忘れもしないこの感覚は…!

ーー意思の赴くままに駆け出していた。

湿った床面を、蹴るように駆ける。
それでもスムーズに角を曲がり、階段へと向かう。

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「マスター!」
ーーアツシさんの、懸命な声。
「セッちゃん、待って!」
ーールゥさんの、苦々しい声。
「覚者様、なりません…!」
ーーハゥルさんの、珍しく緊迫した声。

皆の呼び声を、背中に受けながら……。
でも、立ち止まる気は起きない。
能力的に、私ごときが全力で走ったところで、皆の方が足は速い。ーー直に追いつかれる筈だ。

ーーなのに駆ける私の足は、皆との距離を保ったまま。
何故だかは分からない。でも……このままなら、辿り着ける。

息も切れ切れになりながら駆け込んだ先。
……それは……さっき一度訪れた広間だった。

間違いなく聞こえる羽音。
ーーそしてーー。

「……よく来た……覚者よ」
確かにはっきりと聞こえた。ずっと私を呼んでいた声…!
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