表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

2

見た目から考えると、きっと言葉が通じない相手。
けれど……今は違っていた。
「……あなたは……誰?」
暗がりからゆっくりと現れるそれが、何故 "人" の言葉を話すのか分からない。
そして私も、何故同じ言葉で話し掛けているのか。

あの日見たあの相手だと思ったそれは、また少し違った。
……でも……。でも……!

力強い音を立てる、空間に拡がる大きな羽。
大きな体とそれを支える四肢は、びっしりと蒼く堅いものに覆われ…。

以前この目に焼き付けたそれと、姿は同じように見えるのに。
……色形は少し違うけれども……確かにそれは。
「……竜……?」

頭から血の気が引き、体が小刻みに震える。
疲れ果てて居た筈の体は、今やっとそれを思い出したかのように…。
床を踏み締める足先から順に、体を支える力を失い始める。

ーーそれは恐怖から来る、神経の萎縮もあるだろうか。

……けれど、ここで目を離しちゃ駄目だ……!
唇を噛み締め、震え崩れ落ちそうになる体を叱咤するように、爪を織り込み拳を握った。

「…どうして…」

「ーー覚者よ。其方は何故……竜の許へ」
再度竜が言葉を発した。空気が震撼し、耳から入るその声は全身にも響く。
「私……は……」
気圧されてからからになる喉を、ごくりと唾を呑み無理に潤す。そして腰を低くして軽く身構え、相手の口元を見据える。
ーーどこかに意識を集中していないと、立っていられない。
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からからに乾く喉の奥から、必死に声を絞り出した。
「私は……護りたい人達の為に……。そして……」
やはり恐怖で声が震え、涙すら滲んでくる。
ーー喉元にぐっと力を込め、無理矢理唾を飲み込むようにして堪える。
「ーー私自身の道を……知りたい」
最後の方は、掠れて聞こえていなかったかも知れない。

もはや気を失いそうな位、頭にぼうっと熱い感覚が走る。
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