表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

11

……くらくらと、眩暈がする。
ーーでも。
「アツシ…さん……!わたし……は…、ここにいます……。…おねがい……!」
疼く肩を押さえ、その痛みに息を吐く事しか出来ないながらも。
何とか声を絞り出し、痛みに閉じようとする目を開け続けようと努めた。

「お願い、私を……。もう一度、ちゃんと…見て…」

ーー剣が大きく振り上がる。

諦めちゃ駄目、大丈夫…!
ーーまだ……立っていられる。

彼に殺されよう…なんて、もう考えてはいない。
ーーだって、私は……。
「……わたし、は……!」
剣を構えこちらを見据える目を、しっかり見詰め返す。
ーー目を逸らしてはいけない。こんな時だからこそ……!
「やっぱりあなたと……、いたい……」
体の痛みなど気にしていられない。
剣がゆっくり、頭上から振り下ろされる。
……拳を握り、全身を走る震えを殺す。
「ーーどうしても……。好きなの…!ずっとあなたに、居てほしいの……!」

ーー彼の動きが……剣が止まった。

与えられたチャンスは、今。
そう…、今しかない。
ハゥルさんから受け取った小瓶の蓋を、おもむろに開け捨てた。
ーーほんの一瞬、どうすればいいか迷う。
……そして……。
小さく首を振り、素直に彼に笑顔を向けた。

「……おねがい……。わたしの気持ち…、受け取って」
ーー必ず元に戻してみせるという、確たる意思と共に。
薬を幾分か口に含み……彼の首に腕を廻して縋りついた。
目を閉じ、薬をうまく飲んでくれるよう祈りながらーー移し流し入れた。

先の彼が、私にそうしてくれたように……。
ーー想いを込めて、優しく深く唇を重ねた。

ごくり、と彼の喉が鳴った。
……飲んでくれた……!
ほっとした気持ちとともに、目を開けゆっくりと腕を解き顔を離す。

「ーーセツナ…さま……!」

ゆっくりと剣を構えた腕を下ろす、目の前の彼の瞳はーー。
昏い闇の幕は晴れ、いつもの優しい光を取り戻していた。

……アツシさん……!
「……よかった……」
心からの言葉。涙が自然と滲んでくる。
自然と、顔が綻ぶ。

ーーただ、当の彼の表情には……。
哀し気にも感じる曇りが混じっていた。

スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。