表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

4

竜は詠唱もあまり必要とせず、魔法の光を瞬時に強め膨らませてゆく。
……詠唱が要らない……⁈
驚きから、ついその様子を伺い続けてしまっていた。

竜が掌に浮かべる光が一層眩くなり、はたと我に返る。
ーーしまった…!
きっと、魔法の詠唱すら間に合わなかったような時間ではあった。
けれど、何も……、出来る限りの行動を取らなかった…!

「しっかり‼︎ ーー絶対意地でも止める!」
被弾を覚悟し、身を屈め庇おうとした時。ーールゥさんの声が飛んできた。
竜をしっかりと睨み、渾身の力で弓を引き絞っている。「マスターに…!手出しは…、させない…!」
ルゥさんの矢が弦から離れたその瞬間、アツシさんも竜の懐めがけて飛び込んだ。
鋭く風を切りながら矢尻が魔法の光を宿した前肢に深々と刺さり、一陣の風を巻き起こしながら長い剣刃が竜の腹部を掠める。

グゥオオオオオオォ…!

どこか急所に当たったのだろうか…竜は呻きを挙げて仰け反り、もんどり打って倒れる。
すんでのところで、竜の放とうとしていた魔法の光は消えた。

倒れた竜の躰をよく見ると……。
腹部に、一カ所傷ついてーー赤々と何かが輝いている部分があった。
「あれが弱点…心臓ですね。ーー今のうちに、一気に攻撃を!」
魔法詠唱しながらの、ハゥルさんの檄が飛ぶ。
……そう、竜はまだまだ、力が有り余っている筈。
これしきで、ほっと息をついている暇はない。
急ぎ炎の魔法の詠唱を続けるハゥルさんに倣って、私も使える限りの強力な炎の魔法の詠唱を紡ぎ追う。

ーーそして、竜が起きあがる寸前。
まさに杖を振りかざそうとした、その時……。

ーー"それ"は起きた。

竜が起き上がりざまに、腕を大きく振りかぶった。
ーーその目には凶々しい光を浮かべ……口元は企みに歪んでいる。
「……なかなかに見事……。しかし、まだそれでは真に力を示したとは言えぬ」
言い終わらぬうちに、その腕が床をさらうように動きーー何かを掴む。

「ーーさあ覚者よ。其方自ら乗り越えてみせよ…!」

一瞬、巻き上がった塵が晴れるまで……何か解らなかったそれを。
この目ではっきり確認した時ーー血の気が一斉に引いた。

……あれは……‼︎
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