表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

6

ハゥルさんが、覗き込む気配。
「ふむ。…その珠の形…。多分見覚えがありますね」
考えを巡らせるように目を細め、じっと珠を見据えている。
「球形……。円……。ーーそうか、これは……」
彼自身、行き着いた答えを自分の中で確認するようにーー。
小さく頷き、そしてはっきりと告げた。
「これは…塞がれた通路を開く鍵ではないでしょうか?途中の通路にあった石壁に、確か……」
言われて、朧気ながらその光景が蘇る。

確かに……、まるで穴の開いたような石壁があった…!

私が確信して頷くと、ルゥさんがいち早く通路の方へ爪先を向けた。
「ーーよし、行ってみよう。ハゥル案内して」
ハゥルさんのみならず、全員で頷き合い…。
通路の脇道を確認しながら、進路を今迄と逆の方へ戻る。

「……こちらですね」
先頭を歩いていたハゥルさんが、一本の通路の手前で立ち止まりーーすっと目配せした。
其の先には、確かに。
複雑な模様の入った中に、丸い窪みのある石壁が立ち塞がっていた。

ーー窪みの形と大きさは、手にしている珠と寸分違わず合致した。
紅い珠を、窪みに合わせると……。
まるで吸い込まれるようにきっちりはめ込まれ、すっかり壁の模様の一部として馴染み溶け込んだ。
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石の擦れる重く鈍い音が立ち始めると、自然にゆっくり扉が上げ開かれた。
完全に遮るものがなくなった先には、そしてまた新たな通路が拓けていた。

一同で軽く目線を交わし、微かに頷き合って足を踏み入れる。
更に往くこの先には、何があるのか…。
謎を解く鍵をひとつ得られたのだから、少しは竜に関する知識には近付けているんだろうか…。

先の見えない探索に、焦りにも似た不安を感じる。

歩か踏み入ったところで、急に目の前が騒がしくなった。
突然素早い動きで視界を覆ってくる蝙蝠に身を伏せると、更に其の頭上から何か降りてきた。
その姿が見えないながらも、鋭い気配だけは感じる。
……どこに……?!
ただ戸惑うばかりの私の側を、二連の風が通り過ぎた。
「もう!また魔物…!」
「マスター、下がって!」
アツシさんの振り抜いた長い剣が、目の前の床を薙ぐ。
魔物がぼんやり姿を現し始めたところを、即座に翻る二振りの短剣がその体を切り刻む。

潜んでいたのは、直立する蜥蜴の魔物ーーリザードマン。
けれど、今まで見たものとは体表の色が違った。鮮やかな縞模様の皮に覆われている。
「サルファー・リザードマン…。姿を消すことが出来ます、気を付けて下さい」
ハゥルさんの短い説明に、同じ魔物でも様々な種類のものがいるものなのだと改めて実感する。
「……やっぱりまだ何か居るんだ」
ルゥさんが短剣を手に忙しく体を動かしながら、それでも軽い口調で呟いている。
続いて何体か表れた魔物達も、次々と鮮やかに倒されていく。

ルゥさんとアツシさんーー二人の連携の取れた攻撃の前に、魔物達はあっさり地に伏していく。
最後の一体が胴を貫かれてどさりと倒れ、辺りはまた静けさを取り戻した。
「……こんな程度の不意打ち、甘い甘い」
「ーー大丈夫でしたか?マスター」
各々の剣を納めながら、同時にそれぞれの言葉が発せられ重なる。

「………はい」
この場でもとことん息の合っている行動に、感心すると同時にーー少し面白さも感じて思わず笑ってしまう。
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