表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

7

「ここからまだ……先は長そうですね…。慎重に進みましょう」
ハゥルさんに促され、目を見て肯く。
まだ橋や石壁の通路を開いただけで、詳しい調査は出来ていない。
せめて道すがらに目に付くものだけでも、資料となるものを探して帰らなければ……。

元々芳しくない体調のせいもあって、もう既に疲れが出て来ている。
思わず、小さく溜息を漏らしてしまう。

「ーーセッちゃん」
ルゥさんが、にっこり微笑んで手を差し伸べてきた。
「これあげる、食べて♪」
さりげなく、手に握らされたもの。
ふと見るとそれは、紙に包まれた細長く固いもの。
「ふふん♪とっておきのチョコ!すっごく美味しいんだから♪」
「……え……?あ、あの…」
ルゥさんは軽く片目を瞑ってみせ、やんわり返事を遮った。
「いいのいいの♪……あ、でも一つしかないから〜。二人で少しずつ分けて」
そう言い残しながら、こちらへひらひらと手を振り歩いていく。

「ありがとうございます……」
また少しーー元気を貰えた気がした。

「……アツシさん」
ルゥさんから貰った”チョコ”を、とりあえず小袋にしまいながら…。
隣を歩く彼に、顔は向けずに掛けた。
「ーーはい」
短く、けれども穏やかな返事が返る。
「この…。”チョコ”というものなんですけど…」
半島のはずれに位置するカサディスで育った私には、初めて目にする珍しいものだった。
「……はい」
「……あの……。後で……此処から帰ったら……」
ちらと向けた目に映る彼は、優しい眼差しで…。
「はい」
クスリ、と微笑った。

ルゥさん達が、ゆっくり通路の先の階段を降りていく。
ここもまだ、来たときには通れなかった何本かの通路の一つであって……。
まだきっと、幾つかの通路の先の探索が残っているはずだ。
……思ったより、先は長いけれど……。

「ーー私達も、行きましょう」
アツシさんの手が背に触れた。
ーーそう、周りには……。暖かい、心強い仲間が居てくれる。
だからどんなに先行きの不安な場でも、安心して頑張れる。

微笑って、はい、と小さく肯き。
身を寄せ合うように並び、先行する二人の後に続いた。
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