表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

8

「ーーふむ…。竜の涙、ですか…」
静かに呟くようなハゥルさんの声。
その言葉に、思わずびくりと肩が動く。
「美しく珍しいその石は…。竜の加護をもたらすとも云います。是非、大事にお持ちになられるといいでしょう」
ーーこれも、やはり……?
ますます、どこか気が引けてしまう。
皆に、何と言えばいいか分からない……。

ただ俯いて、黙ってしまう。
そんな私の肩を、誰かが後ろからぽんと軽く叩いた。

ゆっくり振り返った先に居たその相手はーールゥさん。
「ーーほら。みんなこの通り無事だったんだし…!帰るよ。約束でしょ?」
腰に手を当て、私の顔を覗き込んでニコッと笑う。
口調もやはり軽快に、疲れなど微塵も見せない。
此処へ来てーーあれだけ大変な思いをした筈なのに。

ーーその普段との変わらなさが、今は有難かった。
「はい…。そう…でしたよね…」
少しほっとした気持ちになり、微笑い返し…。
手に握ったままだった杖を、ゆっくり納めた。

その、僅かな動きすら……何かに糸引かれるように。
ーーぐらりと体が揺らいだ。

……あれ……?
ーー急に……目の前が歪んでーーー?

見えている風景が、次第に暗くなる。
手足のーー体の感覚もなくなってゆく……。
足元からふわりと浮くような、そして次にそちらへ…床面へ引き寄せられるような…。
ーー私の体は、遂に立ってはいられなくなっていた。

冷やりとした床に肩口が迫る気がした直前、温かい感触に包まれたようなーー。

……でも、もう……わからない。
意識が完全に、暗い闇の中へ墜ちていった。
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