表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

1

ーーいっそ、消える事許されるならば…。ーー

何も無い、誰も居ない……時すら流れない、異界と異界の狭間。
此処は異界の住人のみが立ち入れる、深い無の空間。

ーー倒れ伏した、マスターの姿を。
見ていれば居る程、考えれば考える程。
自身の存在がいたたまれなくなり、此処に居る……。
愛するひとを、決して傷つけまいとーー幾ら守ろうとしても。
悲しませ、傷付け……守りきれない不甲斐ない従者の私にはーー。

そこに……傍に居る資格はないのだと。

あの時ーー何故、自分を抑えられなかった?
何故、傷付けた…!?
はっきりと見えた、戸惑いの…哀しみの表情。
この剣で……。この手で守る筈の、あなたを…。
私はーーこの手で…!
ーー悔やんでも悔やみきれない。
けれど……あなたは決して私を責めない。
ただ黙って、微笑ってくれた。

……けれど、私は………。

「…ちょっと、アツシさん。何やってんのよ……⁈」
ひとり思考を巡らせる中、押し殺したような静かな声が流れ込んできた。
無の空間の、"壁"が揺らぐ。
「……いつまでこんなとこに居るわけ?」
暗闇の隙間を割るようにうっすら現れた人影が、次第に鮮明に見え始める。
ーーその姿を確認せずとも、誰なのかは分かっていたが。
「ずっと此処に…、ってのは無しにしてよね?」
「……ルゥさん…」
いつも明るくさっぱりした印象の彼女だが…今は眉根を寄せ、厳しい表情を向けている。

「そろそろセッちゃんも気が付く筈よ。ーーいい加減帰ったらどう?」
ーー低く強い声。
直接投げ掛けられる言葉が、胸を射す。

……しかし……。
「……私は…!」
どう顔を向ければいいのか。
そして、何と言葉を掛ければいいのか…。
苦々しい表情を、いつまでも向けている訳にはいかない。
ただ謝っただけで、気持ちが収まるものでもない……。
ーー返事に詰まり、俯き目を逸らした。
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。