表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

2

僅かな沈黙の後。
「……アツシさん。あなたねぇ…」
押し殺したような声が漏れ聞こえる。
彼女の手がゆっくりと拳を握るのが、視界の端に入った。

「セッちゃんの守り手はあなたでしょう? あなたが傍に居なきゃ…どうするのよ……!」

ーーそう。私はマスターを…。
セツナ様を、お守りすると云う使命がある。
「けれど……私は……」
何とか絞り出せた言葉は、それだけ。
ーー胸が詰まり、言葉が続かない。
……その筈の私が、傷付けた……。
ぐっと、胸を渦巻き溢れそうになる言葉を呑み込んだ。

ふとすると、手折れてしまいそうに儚げで。
けれども、決して屈しない強い意志を秘めていて。
そんなマスターを……どこまでも守り抜こうと決めていた筈。
"私がお守りします"ーーそう言っていた筈。

……その全てを…私自らの過ちで……!

「ーーああもう! "けど"も、"だって"もない! 何言ってんの!?」
強く大きな声に、思わず顔を上げた。
「いつまでも悩んでてもしょうがないでしょう?ーー自分の気持ちはどうなのよ?…好きなの嫌いなの⁈ 一緒に居たいの居たくないの⁈」
一気に問いかけるその言葉はーー。
勢い良くも私の心に、ひとつひとつはっきりと響く。

「あなたが居なくなったら……、セッちゃんはどうなるんだろうね」
今度は逆に、静かに語りかけるような言葉が向けられる。

「ーーそれは…彼が一番お分かりでしょう」
再び空間が揺らいだ。新たな人影がゆっくりとこちらへ向かってくる。
その穏やかな響きの声とは裏腹にーー強い視線の気配。
「あなたが居ない事に悲しみ、涙しておられる…その意味が」

言い終えると同時に、はっきりとこちらを見据える長身の青年の姿。
「ハゥル!…セッちゃんは?」
「……先程…、お目覚めに」
ルゥさんの問いかけへの答えは、そちらーールゥさんにではなくーーはっきりと私に向けられていた。
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