表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

3

「ーーあなたはあの場で…共に願ったのではなかったですか?永久の不変を…傍に居ることを」
静かに流れるように語るその言葉は、私の胸の歪みを縫うように織り込まれていく。
「あなたと居る時の覚者様は、本当に穏やかな表情をされて……」
何か思い浮かべるような、少し遠い目。
その表情に導かれるように、私の脳裏にも…。
ほんのりはにかんだ、柔らかな笑顔が浮かび始める。

「あの祭壇で声が戻られたのも…、きっとご自身の素直な想いの強さ故。それ程までに想うあなたが…傍に居る事がーー」
息を吐くように発せられる、穏やかな言葉と共に。
ーーゆっくりと、私の心中すら見透かすように。
彼の目が、すっと細められる。
「それが、覚者様の……。一番の幸せなのではないでしょうか」

静かに、けれどはっきりと確信を持って紡がれる言葉。
ーーそう、私自身も…、本当は分かっている。
自分が何処に居たいのか、どうしたいのか…。
たまらず目を伏せ、震える手で強く拳を握った。

「この、何もない空間でこうしている間にも…。外界では、普段通りに時間が過ぎてゆきます。ーー戻られるべきです、早く」
現実に引き戻される言葉に、はっと顔を上げた。

「ーー迷うことは無い筈です、アツシさん。あなた自身のその正直なお気持ちは、ずっと変わっておられない筈。例え何があっても…。そうでしょう?」
ふっと、ハゥルさんの表情が緩んだ。
その優しくも心に直接響く問いに、一度強ゆっくりと頷き返す。
「さあ…。あなたの居るべき場所は、此処ではありませんよ」
今度は強い笑みを浮かべ、やんわり私を促す。

「…ええ…!」
彼の目を、真っ直ぐ見詰め返し。

もう一度、そして今度は力強く頷いた。

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