表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

8

ーーかつては呪いさえしたこの身を、"ポーン"である自分を……。
きっと今まで、此れほど有り難いと思ったことはない。

"主と伴わない従者の方は、お連れ出来ません"

ーー桟橋に佇んでいた、案内人の女性に。
そう言われ、進路を断たれ愕然とした。
愚劣に、異界にこの身を留まらせようとした自分を悔いたーー。
何度も自分に言い聞かせた事。何故、傍に居なかったのだろうと。

そして、このまま……もう逢えないのだろうかと……。

しかし、逆に気付いた。
リムさえあれば、どれだけ離れた空間をも跳躍する事が出来る。
人ではないーーこの"種"として生きる、私だからこそ。

そして私は降り立つ。
只ならぬ気配、昏い空気の支配するーー常闇の島へ。
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「ーーおひとりで何処へ?マスター」

目に飛び込んできた、焦がれ、追い求めたひと。
その変わりない姿に、安堵しながらも……。
此処までひとり、胸の内に閉じこめて来た想いがーーつい表情を硬くする。

リムから気配を辿り、此処へ来たと、あなたを守る使命が私には有るとーー。
通り一遍でしかない、上辺からの言葉が口から出てしまう。

けれど、本当は……。
その哀し気にも見える表情を浮かべ、消え入りそうな声で謝るあなたを。
ーー今すぐ駆け寄り、抱き締めてしまいたいのに。

私自身の中に燻ぶる、"罪"の意識が邪魔をする。

先の見えない、この島で。
それでもあなたが此処に何か目的を見出し、進むというのなら。
ーー私はあなたを、必ず守り抜く。……例え何があっても。

まずは、それを無事果たすことが出来たなら……。
また共に、元の世界へ帰れたなら。
その時私は自信を持ってあなたに伝えよう。
包み隠さない、あなたへの素直な気持ちを。

静かに決意し、足早に追い越し前を歩く。

追い抜きざまに、ちらと見えた彼女の表情はーー。
少しはにかみ、微笑んでいるように見えた。
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