表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

7

「ありがとうございます…」
とにかく私は、竜識者の言葉を反芻して胸に留め。自然に頭を下げた。
竜識者に逢ったことで、更なる先へ進む道を示された気がした。
先ずは、任務の報告に戻らなければ…。
話が終わって現実に戻り、出口の方へと振り向いた時だった。

「ーー待たれよ」
背後から竜識者に呼び止められた。
振り向いた私の顔を、竜識者はじっと見つめながら言った。

「ーー其方、珍しいものを持って居る。ふむ…。"竜の巫"、か…」
耳慣れない言葉に、そしてそれが何の事を指している言葉なのか分からず、思わず首を傾げた。

「其方の持つその杖…。それは恐らく、今では失われた国に在ったとされる物。山々が連なり火山を抱き、豊富な資源に支えられた国…。火の神として竜を讃えた者達が治めていたという…」
そこまで言うと、竜識者は長く息を吐き、私の顔から杖へと僅かに視線を移してまた口を開いた。
「その杖の形…それは ”竜に心臓を捧げるは竜に選ばれし者の証" ,その思想によって生み出された物だ」

私の持つ杖は、ただ美しいだけではない、意味を込められて作られたものかもしれない…。
ーーもしかしたら、思っているよりも大変なものを手に入れたのかもしれない。
その可能性を考え、息を呑んだ。

対する私は言葉を返せず、室内に耳が痛くなるような沈黙が流れた。
ーーそんな考え方があったなんて…。
あの日の私は、ほぼ恐怖しか感じられなかった。とにかく必死だった。竜に逢うことが慶び事だとは思えなかった。
考えを巡らせるうち、竜識者の声が再び沈黙を破った。

「古来よりその国では、女王である術者が神ーー竜や八百万の精霊に祈りを捧げる習慣があり…それはその国の者達にはとても神聖なものに見えたのだろう」
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