表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

3

「……そうか……。ならば」
竜の首が動いた。牙をもたげた口が大きく開く。
「其方の紛い無き心……、しかと示してみよ……!!」
「うっ……!」
空間を震わせる咆哮。
そして先程までよりも、一際大きく響く声に体が圧される。
「ーーっ」
弾き飛ばされるようによろめき、勢いよく転びそうになる。
けれど、そのまま床に倒れ伏す事はなかった。
逞しい腕に抱きとめられ、胸に抱き留められ、事無きを得ていた。
「大丈夫ですか…!」
「あ……」
ーーアツシさん……!
彼が間一髪、駆け付けてくれていた。
「…セッちゃん…、大丈夫?!」
「ーーあれは…竜?!」
ルゥさんと…ハゥルさんも……!

彼の後ろから、残りの二人の声も聞こえる。
皆、いつの間にか追い付いて来てくれていた。
ーーほんの少しだけれど、ほっとして緊張が緩んだ。

「お一人で……、無茶をしないで下さい」
肩を支えながら、私を見つめるアツシさんの表情は厳しい。
衝動に駆られ……危険を省みず来てしまった。
「……ごめんなさい……」
つい、俯いてしまう私に。
彼は小さく息を吐き、肩を掴む手に力を加えた。

「ーーどこまでも……共に往きますから」
ーー穏やかな声。
顔を上げると、彼は静かに力強い笑みを湛えていた。
「あなたを必ず……守りますから」
先程とは、また意味の違う涙が浮かぶ。

「はい……!」
しっかりと頷き合った。

彼が手を離しーー私に背を向け、竜との間に立つ。
「……下がっていて下さい」
振り向かず、竜を見据えている。
その背中を見ていると、大丈夫だという安心感にじわりと包まれる。
「あれと戦うの?…まあ、やるっきゃないわね」
「はい…、何としても」
ルゥさんとハゥルさんも、私の周りに駆けつけてくれた。

ーー皆、ありがとう…!

私もゆっくりと杖を手に取り……。
もう一度、改めて竜を見据えた。

「迷いは無いか……」
竜の顔が妖しく歪む。ーーその表情の豊かさに驚かされ、戸惑う。
言葉が通じる事と云い、それはまるで…?
でも、今は色々考えている暇はない。
気を取り直し、魔法の詠唱を始めようと杖を構えた。
ーーその刹那。
竜が片腕を宙に向け開かれ、光を生み始めた。
……あれは……?魔法?!
「さあ……力を示してみよ……」

一瞬詠唱を止めてしまった私を、真っ直ぐ見据えながら……。

……この竜は、どうして私に……?
どうしても、疑問が拭えない。
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