表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

2

しばし静かに身を留めていた竜が、突然大きく吼えた。
僅かな間に、何があったのか……?
考える間もなく、耳を劈く大きな音にとっさに耳を塞ぐ。
それでも頭に響く、その凄烈な声はどこまでも響き渡りーー海を波立たせ、地を震わせた。
咆哮止んだ後、地の底から沸き上がるような鈍重な音と共にーー地表がひとりでに揺れるのが見えた。
ーー何が……?
見たこともない異変に気を取られているうち、爆発音と共に真っ赤な炎の柱が立つのが見えた。
……もしかして……、これは…‼︎

私が今、見ている映像は……。
竜識者から聞いた、今は亡き国の伝話……では?
ーー"竜が怒り吼え、火山の噴火をも呼び起こしーー" 
かつて聞いた話からの、その部分が脳裏に甦る。

竜は再度羽ばたき、その口から炎を吐きながら地を舐めるように飛ぶ。
人々が逃げ惑い、阿鼻叫喚の声が響く中……。
今まで遠目に、全景を見ていた私の視点が、ある一点に迫り絞られた。

一つの人影が、人々の流れと逆の方向へ進むのが見える。

見覚えのない筈の、その後ろ姿にはーー確かに見覚えがあった。
そして、その人が駆け寄ったもう一つの後ろ姿にもーー。
ーーそれは…、遺跡の探索の途中で視た幻と同じ。
私が持つものと同じ杖に、あの剣は……。

「ーーお逃げ下さい!ここは危険です…!」
どきりとして目を見開いた。
まるで近くで聞くように、声が耳に入ってくる。
剣を背負った男性の、強くも優しく感じるその声は…。
ーーいつも側で聞く声と、同じ響き。

……まさか…、アツシさん……⁈
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