表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

11

桟橋の、夜風に冷えきしむ板を、じわりと踏みしめながらーー恐る恐る近付く。
「…誰…?」
そのうち思わず、疑問が呟き声となって出ていた。

私の声に反応したのか、背を向けていた人物がゆっくりと振り返る。
やはり……長い髪を持つ、たおやかな雰囲気の女性だった。
その容貌は、すらりと美しくもーー。
黒衣に身を包んでいるせいもあるだろうか、どこか寂しそうな光を瞳に浮かべているように見受けられる。
その理由が、何故なのか……とても気になった。

「ーー私が、見えるのですね…」
その問いに言葉を失う。
……どういうこと……?
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「私の姿が見えるのは……、覚者とその従者だけです」
ほどなく告げられたその答えはーー私の心にやんわりと、でも鋭く突き刺さる。

やっぱり私は……。
どこまで行っても、覚者なんだ…。
ーー私はもう……。覚者として、これからも生きていくしかないの…?
たまらず、目を伏せた。
この人に覚者として此処で出会ったのも…。
ーーこれも…、私の辿るべき道なの……?

黙々と、考え込むうちに。
目の前の女性は私に向き直り、改めて話を切り出した。
「ーーどうか私と…来て頂きたい場所があるのです」

ーーそして私は、未だ知らぬ地へと……。
由縁無き者には、視ることすら出来ないと云う地へと。
オルガと名乗った、その女性の案内でーー行き先の分からぬ舟に乗り、出帆した。


この先、何があるか分からない。
……例え、万が一の事だって……。
けれどーー私は私の意志で往こうと思った。

このまま、此処にはもう帰れないかもしれない。
……それでも……。

それで此の世界から消えてしまえるなら、それでもいいとーー。
私の痛んだ心がそう、呟いていた。
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