表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

2

「私達は、リムの碑石さえあれば、其の間を自由に行き来する事が出来ます」
ーーそう言えば、アツシさんも出会った時、碑石から現れた。私は黙って頷いた。

彼はそこで、少し遠い目をして話を続けた。
「あの方は、常に様々な知識を得る為に、よく遠方までも出向いて旅をしておられます」

なかなか話をする事が出来なかったアツシさんの話がとても新鮮で、私はただ静かに彼の話の行方を見守っていた。

アツシさんは私の前に進み出ると、振り返って言った。
「…こんな事を申し上げては、あなた様の気分を害してはいけないと思い、考えながらもずっと黙っていました。ーーすみません」
まるで自分に言い聞かせるように、彼は一瞬、ふっと寂しそうに微笑った。

ちくりと胸が痛んだような気がした。ーー彼は、私のことをちゃんと見て考えてくれていた。
何も見ていなかったのは…私の方だ。

言葉を返せず、俯いてしまう。

「足をお止めてしてすみません。行きましょうか」
その言葉に顔を上げた私に、彼は少しはにかんだような表情を見せた。
「このようなところ、早く抜けてしまいましょう」
ーーまたも、私を気遣ってくれたのだろうか。それ以上は何も言わず、先導するように背を向けて歩き始めた。

今まで私は、彼が自分に愛想を尽かしているのではないかとすら、ずっと思っていた。
……そんな自分が恥ずかしい。
広く逞しい背中が、少し霞んで見えた。
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