表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

8

「資源と技術を結集して創られた、見事な迄に美しい杖を翳し日々祈る姿を…。その国の者は”竜の巫”と呼んだと云う」
言いながら、竜識者の視線が遠くを見るように逸れる。
「其の杖は、祭器として主に使われたのだろう」
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そして話しながら想像を巡らせるように、ゆっくりと目を閉じた。
私も杖を手に取り、改めて眺めてみる。
ーー確かに、必要以上に優美な装飾が施されているように見える。

「それから、もう一つ。…竜の…神の威厳を表した剣。ーー其の方の持つ、その剣だ」
竜識者の目が、今度は私の隣ーーアツシさんに向かって鋭く開かれた。
「其の剣とて、竜を倒す為に創られたのでは無いようだ。竜を迎える為…。その身を竜に捧げる為の道具として使われたのだろう。不死の体を得るために」
……そんな……!
私は目を見開き、反射的に鈍く光る大剣を見た。
アツシさんも反射的に眉を潜める。
竜識者は自らを非議するように、口の端を上げて一瞬ふっと笑い、真顔に戻る。
「其の様な、ともすれば歪んだ思想に囚われ続いた国……。其れも今は亡い」
更に気掛かりな言葉に、竜識者へと視線を戻した。
ただ黙って、その口から静かに語られる言葉を待つ。

「一族の裔の者に、其の事によりもたらされる惨事を憂いた者が居たのだ。竜の巫の系統の娘ーー姫君と其を守る騎士。余程の信頼関係にあったのか…。共に竜に立ち向かったのだ」
ぞくり、と体内の血がざわめくような気がした。
ーーあの日と同じ。目の前に迫る竜の姿が脳裏に思い出された。
そして、今の話の中で耳にした、姫君と騎士ーーその二人が、私達と同じ杖と剣を…?

「…されとて。竜の強大な力は、並の人間からすれば…想像を遥かに超えるもの」
全く、その通りだ。
思わず手に力が入り、掌に爪を食い込ませるようにぎゅっと拳を握る。
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