表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

2

「すみません…行ってきます…!」
気恥ずかしさから、宿を足早に飛び出した。
背後から、行ってらっしゃい!と声がするけれど…。振り向く余裕は無かった。
ーー扉を開けるとそこに、アツシさんが居たから。
「おはようございます」
いつも通りの挨拶。
それだけなのに、頬がかっと上気して俯いてしまう。
「…お、おは…よう…」
返事が、街の生活音にすら消えそうな小さな声になる。
「……?マスター…?」
私の様子に、彼も一瞬首を傾げ…。
そして口に手を当て、固まるような素振りを見せる。
何も覚えがないけれど、他にも何かあったのだろうか。
…そもそも、此処まで運ばせて…迷惑をかけたのは間違いない。
一度顔を上げ、改めて頭を下げた。
「昨日は、ごめんなさい…」
「ーーいえ、お疲れのようでしたから。無理もありません」
まだわだかまりが残るものの、そう言って貰えて少しほっとした。
顔を上げると、やはりいつも通りの彼が映った。
「ーーありがとう」
少し、苦笑いになる。

ーー本当にいつも、ありがとうーー
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