表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

4

「人の命は短く、一度きりです。ポーンの民のあなた方とは違い、限りがあります」
ーー分かっている。分かっている筈の言葉。
それなのに…何故更に拳に力が籠もる?
「ーー貴殿が止め立てしないと云うならば。貴殿には…。激しい戦場に於いて、確実に彼女を守れる保証はあるのですね」
まるで、射られるように感じるーー鋭い言葉が、胸に突き刺さる。
…そうだ。私はポーン、マスターは人。…そもそも私達は…違うのだ。
ーーそれでも。
「はい。必ず」
自分に言い聞かせるように、言葉に出して返す。
出来る限りの決意を、視線に託して。

「…では、率直に問う。貴殿のその言葉、従者としての定義か。それとも…私情によるものか」
卿の眼が細められ、双眸に鋭い光が宿る。
それは明らかに…ある意志を示している。
「……私は……」
頭の中に、従者として言うべきでないであろう言葉が浮かぶ。
それは喉に支えたように、実際に言葉になって出てこない。

ーー短い沈黙が流れた。
「…やはり答えられぬか」
卿はあまり表情を動かさないまま、ふっと笑った。
「もし彼女や貴殿らには力及ばず、任務遂行出来ぬ時…。私は彼女には任を降りて貰う事を進言するつもりです」
「……!」
淡々と告げるその宣告に、拳を堅く握り直し歯噛みした。
それは、マスターの進路を塞ぐ事を意味する。
…そんな事は…させたくない。マスターはそれを望んでいない…!
「私は彼女には…危機に晒されず生きて欲しい。…叶うならば…私の側で」
穏やかに…呟くような言葉は。

けれど刃のように、鋭く私の胸を抉る。

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