表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

6

対岸…というよりは、一つの建物の中心の通路が壊れて分かれてしまった先も、調べてみる必要があるかもしれない。
よく見ると、下から続く梯子がある。
…あれを昇れば…。
縁に立ってそう考えていると、後ろからルインさんの声が掛かった。
「向こう側も調べてみますか?」
私が肯くと、アツシさんが先手を取って階段を下へと引き返して行った。
「私が行きます」
それだけ言い残し、階下へ颯爽と消えて行く。

暫くして、アツシさんがゆっくりと外へ出るのが見えた。
素早く建物の間を駆け抜け、苦もなく梯子を昇っていく。
その姿に逞しさを感じながらも、複雑な思いを胸に見守った。
本当は付いて行きたいけれど…きっと私は足手纏いになるから。
そんな事を考えてしまう。
そもそもこんなところまで、無事に来れているのが不思議だ。
私は今まで彼に、いつも助けられてきた。
きっとその行動には、並々ならぬ努力が伴っている筈だ。
梯子を昇り終え、すくと力強く立つその後ろ姿は、何故かとても遠くて。
いつも特に何も語らず、黙って付いて来てくれる彼は、何を思っているのだろう…。
ーー私は彼の事を、何も知らない。
向こう側の様子を調べに、死角へと消えていく彼の背中を見ながら、つい感傷に浸ってしまっていた。

駄目だ、集中しないと…。
小さく首を振り、対岸へ目を凝らした。
やがてすぐ、梯子を引き返してくる様子が見えた。

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