表記について

・R指定表現のあるページには、(※R)を付けています。苦手な方はご注意下さいませ。
・「NOVEL1」の内容は"ポーンコミュニティ"にも載せておりましたが、本サイト掲載の際に各所加筆修正しております。

11

外に出ると、兵士達が歓びの表情で私達を迎えてくれた。
「…覚者殿、ご無事で…!やりましたな!」
隊長が手を振りながら歩み寄り、労いの声を掛けてくれた。
「ーーありがとうございます。…皆さんも」
私も何とか、笑顔を作って応えた。
「…幾らかの犠牲は出ましたが…無事砦を奪還する事が出来、何よりです。ーー我々はこのまま此処に駐留し、防備の体勢を整え直していきます」
隊長は静かに、けれど力強く語った。
…彼の視線の先には、きっと…。
本当に辛く苦しい、激闘の末の勝利だった。
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「ーーそれから…」
隊長は腰に下げた袋から、丁寧にくるまれた包みを取り出した。
掌に乗せ、はらりと解く。
その中には、黒い小石が一つと、大葉の薬草が一束。
「竜征任務指揮官殿から預かっております。…これを使って頂くようにと」
「…マクシミリアンさんから…?」
包みを受け取りながら、不思議な光を湛える小石をじっと眺めた。
「それは、目的の場所まで一息に跳べる道具です。領都まで一瞬で戻れるでしょう」
その言葉に驚きを隠せず、思わず小さな声が漏れた。
わざわざ、そんな貴重なものを…?

「…今日はお疲れでしょう。是非それでお戻り下さい。高く放り投げるだけです。それから任務完了の報告も、どうか宜しくお願いします」
優しい表情でそう告げる隊長さんに、目を合わせて頷き、はいと答えた。
「…帰りましょう」
皆の顔を見回し、告げた。
「ーーはい、覚者様」
呼び声に皆、一所に集まる。
小石を握り、空に向かって放り投げた。

「ーーどうかこれからも、ご健勝で…!」

眩い光に包まれる私達をーー隊長さんをはじめ、兵士達も皆見送ってくれていた。
光の膜越しに見た彼らの表情は、明るく柔らかかった。
同じく笑顔で会釈を返す私の姿は、彼らにはもう見えなかったかも知れないけれど。
此処で短い間にも培われた、想いは……絆は、通じていると信じたい。

ーーどうかこれからも、ずっと。
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